道路交通法の改正(電動キックボードの交通ルール)

カテゴリー
ジャンル


1 はじめに
 令和5年7月1日より、電動キックボードなどに関する改正道路交通法が施行されました。これまで電動キックボードは、いわゆる原付バイクまたは自動車と同じ扱いで、運転免許が必要とされていました。それが道路交通法(以下、「法」といいます)の改正により、一定の基準を満たす電動キックボードは、「特定小型原動機付自転車」と定義され、16歳以上であれば、運転免許がなくとも運転ができるようになりました。
 今回は、「特定小型原動機付自転車」なる電動キックボードを運転する際に注意すべき交通ルール等を説明します。


2 特定小型原動機付自転車の概要
(1)車体基準

 原動機付自転車のうち車体の大きさ及び構造が、自転車道における他の車両の通行を妨げるおそれのないものであり、かつ、その運転に関し高い技能を要しないものである車として道路交通法施行規則で定める基準に該当するものをいいます。
 道路交通法施行規則で定める基準は以下のとおりです。
【車体の大きさ】
 ・長さ:190センチメートル以下
 ・幅 :60センチメートル以下
【車体の構造】
 ・原動機として、定格出力が0.60キロワット以下の電動機を用いること。
 ・時速20キロメートルを超えて加速することができない構造であること。
 ・走行中に最高速度の設定を変更することができないこと。
 ・オートマチック・トランスミッション(AT)であること。
 ・道路運送車両の保安基準第66条の17に規定する最高速度表示灯(灯火が緑色で、点灯又は点滅するもの)が備えられていること。
上記基準を満たさないものは、形状が電動キックボード等であっても、「特定小型原動機付自転車」にならず、法改正前と同様に、一般原付と同じく運転免許が必要なものとして、交通ルールが適用されます。
(2)保安基準への適合
 特定小型原動機付自転車は、道路運送車両の保安基準に適合するものでなければ、運行の用に供してはならないこととされています。
 性能等確認済シール等が付けられているものは、この基準を満たしています。
(3)自賠責保険への加入義務
 特定小型原動機付自転車は、自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済(いわゆる自賠責保険(共済))への加入が義務付けられています。
(4)ナンバープレートの取付け
 特定小型原動機付自転車の所有者は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)の条例等の定めるところにより、標識(ナンバープレート)を取得し、車体の見やすいところに取付けなければなりません。


3 主な交通ルール
(1)16歳未満の者の運転の禁止

 特定小型原動機付自転車を運転するために運転免許は必要ありませんが、16歳未満の者が特定小型原動機付自転車を運転することは禁止されています(法第64条の2第1項)。
 また、特定小型原動機付自転車を運転することとなるおそれのある16歳未満の者に対して特定小型原動機付自転車を提供することも禁止されています。
 これに違反した場合は、6か月以下の懲役または10万円以下の罰金が課されます。
(2)飲酒運転の禁止
 酒気を帯びている者で、飲酒運転をすることとなるおそれがあるものに対し、特定小型原動機付自転車を提供したり、飲酒運転をすることとなるおそれがある者に対し酒類を提供し、または飲酒をすすめてはいけません(法第65条)。
 これに違反した場合は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金等が課されます。
(3)2人乗りの禁止
 特定小型原動機付自転車は1人乗りであり、2人乗りをしてはいけません(法57条1項)。
 これに違反した場合には、5万円以下の罰金等が課されます。
)乗車用ヘルメットの着用
 特定小型原動機付自転車の運転者には、乗車用ヘルメットの着用の努力義務があります(法第71条の4第3項)。
(5)車道通行の原則
 車道と歩道又は路側帯の区別があるところでは、車道を通行しなければなりません(自転車道も通行することができます)。
 道路では、原則として、左側端に寄って通行しなければならず、右側を通行してはいけません(例外的に、特例特定小型原動機付自転車(※)に限り、道路標識等により歩道を通行できることとされているときは、その歩道を通行することができます。また、特例特定小型原動機付自転車は、著しく歩行者の通行を妨げることとなる場合を除き、道路の左側に設けられた路側帯(歩行者用路側帯を除く)を通行することができます。)。

 ※特例特定小型原動機付自転車とは
  特定小型原動機付自転車のうち、次の①~⑤のいずれにも該当するもので、他の車両を牽引していないもの(遠隔操作により通行させることができるものを除く)をいいます。
  ①歩道等を通行する間、最高速度表示灯を点滅させていること
  ②最高速度表示灯を点滅させている間は、車体の構造上、6キロ
   メートル毎時を超える速度を出すことができないものであること
  ③側車を付けていないこと
  ④ブレーキが走行中容易に操作できる位置にあること
  ⑤鋭い突出部のないこと


4 特定小型原動機付自転車運転者講習制度
 特定小型原動機付自転車の運転に関し、違反行為を繰り返す者について、その危険性を改善し、将来における交通の安全と円滑を確保するための措置として、特定小型原動機付自転車運転者講習制度が設けられました。
 これにより、都道府県公安委員会は、特定小型原動機付自転車の運転に関し、信号無視、通行禁止違反などの違反行為(特定小型原動機付自転車危険行為)を反復して行った者に対し、講習の受講を命ずることができるようになりました。
 講習の受講命令に従わなかった場合、5万円以下の罰金が課されます。


5 おわりに
 上記法改正により、電動キックボードの内、特定小型原動機付自転車に該当するものは、16歳以上の方であれば、運転免許証がなくとも、運転ができるようになりましたが、上記の交通ルールに関連する交通違反・事故が発生している状況です。
 守るべき交通ルールをしっかりと理解した上で、遵守して運転しましょう。