SNSの投稿者を知りたい!~プロバイダ責任制限法の改正~

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1、発信者情報開示手続とは

SNSなどのインターネット上の投稿によって名誉棄損などを受けた被害者が、一定の要件の下で、SNSなどを運営するコンテンツプロバイダ(Google、Twitterなど)や発信者がSNSなどに侵害情報を記録する通信を媒介したアクセスプロバイダ(Softbank、KDDIなど)に対し、発信者の氏名や住所などの情報開示を求めることが出来る制度です。


2、これまでの仕組み

これまでは、①発信者情報開示仮処分の申立て、②発信者情報開示請求訴訟という2段階の審理が必要でした

まず、第1段階では、IPアドレスの開示を受けるために、コンテンツプロバイダに対し、発信者情報開示仮処分の申立てを行います。

IPアドレスとは、ネットワークに接続するデバイス(パソコンやスマホ、プリンターなど)に割り振られる番号のことです。インターネット上の情報をある端末に届けるために必要な住所のようなもので、はがきを届けるのに相手の住所が必要なように、インターネット上の情報を取得するには、自分が使うデバイスのIPアドレスと接続先のIPアドレスが必要です。

発信者情報開示仮処分によって、インターネット上の投稿者のIPアドレスが判明するので、その投稿者の使うデバイス(パソコンやスマホなど)のアクセスプロバイダを割り出します。

第2段階では、割り出したアクセスプロバイダに対し、発信者情報開示請求訴訟を提起します。これにより、開示されたIPアドレスが割り当てられているデバイスを所有する者の氏名・住所を開示させることができます。

このような手続では、3~6か月と言われているアクセスプロバイダのログの保存期間が経過してしまう可能性があり、その場合、発信者情報開示請求訴訟に辿り着く前に、投稿者を明らかにする道が絶たれてしまいます。


3、新しい法律

そこで、プロバイダ責任制限法が改正され、2022年10月1日に施行されました。これにより、2段階の手続を踏む煩雑さと手続の長期化という二つの問題が解消されました。

具体的には、コンテンツプロバイダに対し、発信者情報開示命令申立をするとともに、アクセスプロバイダの保有する発信者の氏名・住所等の情報の提供命令申立を求めます。

そうすると、書面審理のみで、アクセスプロバイダ名が提供され、申立人は、IPアドレスの開示を待たずに、アクセスプロバイダに対して開示命令申立をすることが可能になります

先行するコンテンツプロバイダに対する発信者情報開示命令申立と後行するアクセスプロバイダに対する発信者情報開示命令申立は併合されるため、2段階の手続を踏む必要がなくなりました

また、新設された提供命令制度によって、コンテンツプロバイダに対する発信者情報開示を争っている間に、アクセスプロバイダが保有するログ保存期間を経過する心配がなくなりました。


4、まとめ

上記のとおり、法改正により、2段階の手続を踏む煩雑さと手続の長期化という従来の手続上の問題点は解消されたように思います。

しかし、改正法は2022年10月1日に施行されたばかりであり、詳細な手続は、今後の実際の運用に注意する必要があります。